皆さんはジュエリーをお求めになる時はどちらでお求めになられますか?
百貨店やテレビショッピング、大手通販サイトなど、最近は様々なところでお求めになる機会がありますね。
私の場合はごくたまに、ひっそりと長く営業していらっしゃるお店の中で、とても古い在庫であると紹介をされるジュエリーと出会い、ご縁を頂く事があります。
そういった古い在庫というのは、
「30年、いや40年、ここでお留守番をしているのだよ。」
などとご紹介をいただくのですが、どれ程に惹かれたとしても、このジュエリーを私が連れ帰って良いものかと一旦は躊躇してしまいます。
それはなぜかと言うと、そのジュエリーはお店の主というか、まるで守り神のように、お店を永い間見守り続けていたようで、あっさりと連れかえってしまう事に戸惑いを感じるのです。
とは言え、ジュエリーの気持ち(?)になってみれば、日の目を見て誰かの側で輝きたかったのだろうとも思う為、それが私で良いのかよく吟味した上で頂いて来たものが何点かございます。
本日は、そんな風にして私の元に来てくれた、元お留守番ジュエリーの中から三点を(もっとある…)紹介したいと思います^^
( 1 )謎の指輪、エジプト風
ある町の、寂れた商店街に佇む小さな宝石店を40年以上見守り続けていたリングです。
店主曰く、ヘンなデザインだから誰も買わないんだよ、との事 笑。
ヤギ?なのかヒツジ?なのかよくわからないのだけれども、エジプトの壁画みたいで気に入ってしまいました。
店主がお店を開いてすぐにやってきて、ずうっと売れないヘンなリング…なぜ店主は仕入れたのか甚だ不明ですが、私は大好きなリングです。
しかもサイズがシンデレラフィット 笑。
私のサイズは既製品だとあまり見かけないので運命的な出会いでした。
とは言えあんまり使わないんですけれど、手元に置いておきたいリングです。今は私のジュエリーケースの守り神をやってくれています。
( 2 )1.2ctのダイヤモンド
エジプト風のヘンなリングと同じお店です。
婚約指輪を作りたいと店主に相談すると、奥の金庫から恭しく取り出したのはお菓子の缶。
缶を開けると大量のソーティング袋(勿論ダイヤモンドのルース入りの!)が現れて、その中から綺麗で安いダイヤモンドを見繕ってくれました。
そのダイヤモンドは1.2ctもあるのに、27万円でした。
後日店主は仲間の職人に怒られてしまったそうです。
あの石が27万円は、今じゃ仕入れ値だよ。三十年前の値札のままじゃないか。値札を付け替えなくちゃいけないよ、と。
品質はH-SI2-VGです。
( 3 )ムーンストーンのペンダント
あるジュエリー工房に長い事お留守番をしていたペンダントです。
どうしても気になってしまい尋ねると、十何年、いや何十年も前に職人が手づくりで枠をこしらえた作品との事。
道理で枠に揺らぎがあると思いました。
揺らぎはCADでこしらえた製品には出せない、人間が美しいと感じる感性を刺激するチャームポイントです。
そして鋳造の枠にはない、細部の鋭さが見受けられました。
鋳造の枠だと、遠目から見たときにやや輪郭がぼやけるというか…とにかく目に留まってしまったのです。
しかしこの作品をこしらえた職人さんは今はもう天国にいらっしゃるとの事、詳細は多くはわかりませんでした。
現在のムーンストーンというのは最早コマーシャルネームのようで、本物の(鉱物学上の)ムーンストーンは少なく、ペリステライトやホワイトラブラドライトがムーンストーンと呼ばれ流通しています。
この作品は製作された年代を考えるとムーンストーンで間違いがなさそうで、見た目もムーンストーンで間違いがなさそうでしたが、このタイプの外観を持ったペリステライトも存在するようだったので念の為中宝研で鑑別をとって頂きました。
やはり検査結果はムーンストーン、ヨーロッパのアンティークジュエリーにある青やレインボーのタイプではなく、ロシアのアンティークに一部見られるボーっと光るムーンストーンでした。
サイズはたっぷりと30ctあり、この石の魅力を堪能しやすいサイズ感です。
この石は深い癒しを与えてくれるような、ボーッと何かが溢れ出しています。
ポーじゃなくてボーっと、兎に角大量の波動が。
このムーンストーンにこの枠はピッタリでしょう。
おじさん…おじいさんかな、真剣な面持ちの職人が、この可愛らしいレースのような飾りを製作している場面を思い浮かべるとほっこりとします。
永い永いお留守番をしているジュエリーというのは、見方によっては誰にも選ばれなかった売れ残りかも知れません。
然しどういう訳か私にとっては、ジュエリーが誰にも自分を選ばせなかった、私を待っていてくれたのかも知れないと肯定的に思えて仕方ありません。
こういった出会いが、ジュエリーを愉しむ上で最上級の楽しみである事は間違いなく、そんな出会いを探し求めてまだまだ旅は続くのでしょう。
旅はつづく…。
(お話はおわり)