時々ご相談頂く内容として一番多いのが、
「大粒のダイヤモンドを購入してみたいのですが夢のまた夢でしょうか…。」
という趣旨のものです。
私は野良の蒐集家(ただの収集癖がある人)という所謂一般人、宝石の業界人ではなく全くの素人なので、アドバイザー的なお仕事をする立場ではありません。
ですがほんの稀に、メッセージを頂き「フィーリングが合うかな?」と感じた方のご相談にお答えすることがございます。
その時皆さんが仰るのは、
「1ct前後のダイヤモンドを購入する為には、最高品質ではなくても、少なくとも百万円は用意しないと購入できないと思っていた。」
というものです。
以前書いた記事にもあるように、私がダイヤモンドやサファイアなどの宝石を買うときの段取りは、
1.ギリギリまでグレードを下げたところから探し始め
2.必ず実物を良く見ながら
3.自分の目で見て美しいと感じるものだけを選び取る
このようなものです。
そういう低グレードの石を沢山見ても、魅力的な個体に出会う事はそう多くなく、欲しいものをパッと入手できる世界ではありません。
ですから至極面倒で、やたら泥臭く、宝石を買うという行為に相応しくないような、半ば宝探しにも風情が似たものといえばイメージが湧きやすいのではないでしょうか。
宝石のお買い物といえば、
1.ドアマンのいる高級な店内で
2.一言放てば奥のソファに恭しく通され
3.シャンペインを頂きながら目当ての宝石をゆるりと眺める事ができる…
このようなイメージがおありの方からすると、雲泥の差と言えるでしょう。
但し、ご相談をいただき実際に大粒のダイヤモンドに出逢われた皆さまが仰るのはこのようなことでした。
「1ct前後のダイヤモンドを購入する為には、少なくとも百万円は用意しないと購入できないと思っていました。だけれど、その半分も必要がありませんでした。費用が余ってしまったので、もう一石購入します。」
「おすすめ頂いたダイヤモンド、選べないから二つとも購入することにしました。二つ買っても予算内だょ…。」
大粒のダイヤモンドを入手することは夢のまた夢、そう思っていたのに最も簡単に叶ってしまったということらしいのです。
ブティックで優雅に宝石を選ぶ素晴らしさも、
宝探しのように宝石を探す素晴らしさも、
どちらも優劣なく素晴らしく、かけがえのない体験でしょう。
ただ一つ言えることは、ブティックで優雅に宝石を選ぶ手法を選択する場合、1ct以上のダイヤモンドを連れて帰ることができるのは、ほんのひと握りの富裕層だけ、これは紛れもない事実なのだと思います。
然し、私はどうしても、どーーーうしても1ct以上のダイヤモンドを宝石箱に並べたかった…!
だから私は、ブティックを訪問するに相応しいリトル・ブラック・ドレスを脱ぎ捨て、未開の地へ宝探しに出かける方を選んだ、ただそれだけの事なのです。
そしてその未開の地は緩やかに開拓され、読者の皆さまが宝探しに出かけ愉しまれる事が叶うなら、そんな楽しいことはないなと感じています。
日本の宝石業界が唱えるダイヤモンド選びに於ける常識といえば、
1.Gカラー以上
2.VS1以上
3.ラウンドブリリアントならEX以上
これらを満たしていない石は買うべきではない、と語られていることは皆さんも良くご存知かと思います。
然し私は、
1.Mカラー以上
2.I1以上
3.ラウンドブリリアントならGOOD以上(場合によってはGOOD以下も見る)
このようなランクから石を探し始めます。
これはプラチナ枠にセットする、詰まり白いダイヤモンド(カラーレスのダイヤモンド)を入手したい時の探し方です。
これ程までに宝石業界の常識から悪い意味で掛け離れた、低いランクからダイヤモンドを見ていく理由は、
良く探せばこのランクにも美しい個体が僅かながら存在する事を知っていることと、
宝石業界の常識には当てはまらない事から、殆どの人が見ないランクである為、掘り出し物に出逢う可能性は決してゼロではない、そういうところにあります。
然し、ダイヤモンドに興味がある人程、宝石業界の常識の範囲内でダイヤモンドを探そうとするケースがとても多いと言う印象があります。
私は宝石業界の持つ常識の範囲内でダイヤモンドを探される事はそう悪くない判断だと思っています。
それは矢張り、その範囲内であれば万人がよいと感じるダイヤモンドが多いので知識がなくとも判断し易く、ヘンな石を買って仕舞うリスクを減らす事が容易です。
但し何事にも短所があるように、この場合、このグレード内でダイヤモンドを探す場合は、大粒を買う事は難しくなります。
万人がよいと感じる美しい宝石であり、宝石業界がよいとするグレードを満たしており、然程知識がなくても容易に購入できるようなダイヤモンドは、大粒となると価格がとびっきり高いのです。
そして、ダイヤモンドは天然石、地球が創り出した美しい作品であるからこそ、
1.Mカラー以上
2.I1以上
3.ラウンドブリリアントならGOOD以上(場合によってはGOOD以下も見る)
この範囲内に稀に美しい個体が存在している事とは真逆の現象、
1.Gカラー以上
2.VS1以上
3.ラウンドブリリアントならEX以上
この範囲内で探した石に、ごく稀に微妙な個体が存在して仕舞う事、これが見逃せない点だと思うのです。
このような事から、
ならもう自分の目で見て美しい石を選べばよい。
大粒のダイヤモンドを楽しみたい私は前者を選ぼう。
時間がかかっても良い。
だって、この方法でなければ大粒を入手できないのには変わりないのだから。
そう私は判断しているのです。
これは本当に価値観の問題であり、何が正解で何が不正解という次元の話ではありません。
もっとシンプルで、誰にでもわかることです。
「ご自身の目で見て美しいと思える石を探すのに最適な方法」を選択する、ただそれだけのお話です。
(写真・1ctのダイヤモンドと0.3ctのダイヤモンド)
ここまで読んで下さった方の中に、
「どうしても大粒ダイヤモンドをこの指につけて楽しんでみたいから、リエコさんの探し方でダイヤモンドを購入してみたい!」
このようにご興味を持ってくださった方がいらっしゃったら…
目の前にすうっと現れた隠し扉がギギギと開き、魅惑の世界が広がるのです。
但しここは未開の地…。
視界は悪く、やっとたどり着いた先は玉石混合、ぼうっとしているとどこから魑魅魍魎が出現するかも分りません。
でもきっと大丈夫、良きガイドとなる人物に出会いがあるでしょうし、そのステージに相応しい宝の地図を入手することだってできるのです。
大粒ダイヤモンドを所有する、これは夢のまた夢ではありません。
この壮大な宝探しを楽しめる者のみに開かれた扉の先には、美しい大粒ダイヤモンドがあなたに出逢えることを心待ちにして…静かに輝きを放っています。
「この冒険に出かけてみたい!」
そう思ったあなたの前には、もう隠し扉が現れている事でしょう?
(おしまい)
PS. この冒険はとっても楽しいものですが、手に届いてしまいそうな宝が非常に多い為、深い沼であることをご了承ください(笑)