前回のお話↓
満を辞してポチッた私の元に、待ちに待った時計がやって来ました。
初めてのオメガ、美しきダイヤ時計です。
時計を手に取って、小さな違和感に気づきました。
文字盤が、ケースの雰囲気に合わない気がする…と思ったのです。
ケースがプラチナ製の立派な作りであるのに、文字盤がクリーム色、針やインデックスはゴールドです。
コンビカラー、と言えばそうなんでしょうけれど、なんかちょっと合わない気がします。
実はこの点も技師との会話の中で、成る程そういう事なのか、と当時の事情を知ることとなります。
第二次世界大戦の頃、金属類回収令にて殆どの金属類が軍需物資として回収されました。
勿論、金時計も回収されたそうですが、ステンレス製の時計は返却された…という事があったそうです。
技師曰く、この時計のムーブメントが何らかの理由で返却され戦後裕福だった持ち主が上質なダイヤモンドをふんだんに使ってケースを新しく作らせたそういう事もあったんじゃないか…と。
こちらの資料、ダイヤモンド・ジュエリー(別冊太陽 スペシャル)
71ページの年表によると、第二次世界大戦が終わったのが1945年、ダイヤモンドの原石の輸入が開始されたのは1957年との事です。
もしこちらのケースが戦後、日本の彫金師の手により作られた特注品であるとしたら…
1957年以降、pm900という刻印の年代(1960年頃)と辻褄が合います。
そして、この時計の中身の機械の品番(キャリバー)を調べてみると、1938年から1959年頃に製造されていたそうなので、この事からも辻褄が合うと言えるのではないでしょうか。
このように、自分が持っていたムーブメントに、好みのデザインのプラチナケースをつけた…と考えられるならば、デザインがチグハグな感じがするのは納得が行きます。
そんな事を考えておりましたら、別件で購入したステンレス製のオメガが届きました。
これが驚きなのですが…この日届いたステンレスケースのオメガの中身が、このプラチナケースのオメガの中身と全く同じ機械である、という事が判りました。
裏蓋を開けてびっくりですよ。
これ本当に偶然で、パーツが欲しくて購入したステンレスのオメガだったので、中身が何であるかは一切知らなかったのです。
まじでパーツが欲しかっただけなので、オメガでなくても良かったくらいなのですよ。
フリマサイトやヤフオクでアンティーク時計を購入する場合、裏蓋を開けた写真が載っていない事が殆どですからね。
恐る恐る中身を入れ替えてみると…??
ピッタリでした。
最初からこの文字盤が入っていたのかな、というくらいデザイン的にもピッタリでとても驚きました。
これなら違和感がありません。
アラビア数字があしらわれているのも、どこか懐かしい雰囲気があって可愛らしいと思いました。
このようにして私は、この美しいケースにピッタリな中身とドナーを、偶然、ほぼ同時に手に入れました。
今後、時計のパーツが消耗した際にはドナーから部品をとることが出来るので、安心して時計を楽しむことができます。
こちらの時計には、元は黒紐がついておりました。
留め具はステンレスです。
ステンレスは金属アレルギーが出てしまう為、この美しい時計を身につける為には、金無垢のブレスレットを取り付けなければなりません。
その金無垢ブレスレットも、別の時計の為に購入していたものがピッタリでした。
葉っぱのようなデザインのブレスレットなのですが、こちらのラグにも葉っぱがデザインされているので、仮で当ててみると、まるで誂えたかのようにピッタリ合います。
ほらっ!
ピッタリではないでしょうか^^
このようにして、美しいオメガのダイヤ時計は、技師の元へ整備に出されました。
私がいつもお願いしている時計技師は、実はオメガの整備に関しても凄く詳しい方で、オメガの部品も沢山ストックがあると伺っておりました。
ですので、この美しいオメガには、奮発して新品のオメガの竜頭(デッドストック)をつけて頂きました。
他のお店で購入するよりも、随分とリーズナブルに譲って頂きほくほくです^^
ピカピカの竜頭だよ↓
整備から戻ってきたオメガを見て、私が手にして良いのだろうか?と思うくらい、素晴らしい時計に産まれ変わっておりました。
整備のついでに、風防の接着剤のやり直しとケースの洗浄をして下さっているので、プラチナもダイヤモンドも光り輝いておりました。
かつて、謎の黄色い汚れが詰まっていた光穴も綺麗さっぱりと洗浄されており、光をよく受けて強い輝きを放ちます。
14金無垢のブレスレットはサイズ調整の為にカットして頂いたので、ロジウムメッキをかけており、新品のようにピッカピカです。
プラチナの真っ白な輝きと、真っ白に煌めくダイヤモンド、そしてピカピカのブレスレットが揃ったことで、素晴らしい宝飾時計に仕上がりました。
この時計が仕上がって来たことをアンティーク時計同好会の友達に伝えたところ、
「これはラスボスだわ…!」
「ゴリゴリのダイヤ時計やばい!!」
と、最高の褒め言葉と思わしきメッセージを頂戴しました^^
数ヶ月後には、数名の友達がゴリゴリのダイヤ時計を、ラスボスとしてお迎えされた事は言うまでもありません(笑)
そして私は、そんなつもりは無かったのだけれども…。
このダイヤ時計が、実質の最後のダイヤ時計…のような形になりました。
矢張りこういった大物というか満足度が非常に高いものを迎えると、似たようなものをもう一本欲しくならないというか、アンティークのダイヤ時計に関しては物欲が落ち着いてしまったよね。。
良いことなんだけど、少し寂しい気もするのが恐ろしいです。
麗しいのう〜!
こちらの時計の中身についてですが、凄く綺麗な状態だったそうです。
ドナーにした方も同じく綺麗だったみたいで、これから先もまだまだ使えるじゃん〜と、嬉しい気持ちです。
私がこの時計を長く使えるなあと思う理由はもう一点あって、それは文字盤がデカい事です(大爆笑)
アンティークのダイヤ時計って、嘘みたいに文字盤がちっちゃいものが多く、まだ老眼が来ていない私の目にも視認性がイマイチ…!
↓これとか文字盤が小さくてだねwww
でもこのオメガは、老眼になってもかろうじて見えるのではないかな、と思う文字盤サイズなんですよ。
試しに母に見てもらったら「小さいけど見える!」そう申しておりました^^
そしてこの時計には、こんな物も購入してしまいました。
古いオメガの箱です。
この美しい時計を飾ったり、写真を撮ったりする時に小道具として使うかな〜?と思って買ってみました。
時計と年代が一緒かはわからないんですが、良い感じにボロっとしているので、雰囲気が合うのです。
こういうアイテムを揃えていくのも楽しいんですよね。
でもこのボロっちい箱も、まあまあなお値段するんですよ、ふつうに沼です。
飾っても楽しい箱入り娘はいかが…?
なんて言われたら沼るでしょう?沼らない?そうか私だけか。。
こちらのムックは私が随分若い頃に購入したもので、ずっと大事にしております。
まさか大人になってこんなに沢山アンティーク時計を蒐集してしまうなんて…若き日のリエコは思って…いたかもしれないですね。
もう廃盤のムックですが、タイミングが良ければ購入できる事もあるので、良かったら読んでみてください^^
おお…そなたは美しい…。
12時位置と6時位置にあしらわれた角ダイヤは澄み渡るような美しさ、ラグを飾るボタニカルな意匠はエレガントでタイムレス、この雰囲気が堪リません。
勿論、添えられた極小のメレダイヤまでもが強く光り輝き、白い光と虹色の光を放ちます。
麗しのオメガのダイヤ時計は、私にとって最初で最後のオメガとなりました。
この時計を身につけるたび、気分が上向くような、高揚するような、元気が湧き出るような感覚があります。
徹底的に美しくて素敵なものには、人智を超えた不思議な力が秘められているのかも知れませんね。
この美しい時計を身につけられる幸せを噛み締めて…
新たな旅に出るのであった… (?)
(おしまい)