
数年前の出来事です。
私の指示が上手く伝わらず、セミオーダーの加工に失敗してしまったジュエリーがありました。
加工先はハイブランド風の空枠を多く取り扱う業者さんで、加工したお品物はハートシェイプのダイヤモンドリングでした。
それは両サイドにテーパーカットのダイヤモンドが添えられたリングで、海外のハイジュエラーならどこでも取り扱いがあるような定番のデザインです。
グラフならプロミスハートシェイプダイヤモンドリング、ハリーウインストンならハートシェイプクラシックリングがそれに当たります。
これらのリング、デザインの分類としてはスリーストーンリングになります。
このスリーストーンリングが曲者で、なぜか日本の業者さんでスリーストーンリングを注文すると爪の高さを極限に抑えたものが上がって来る…という現象があるのです。
これはなんでなんだろうなぁ〜と色々考えてみたのですが、「引っかかりをなくしたい=爪が低くあればよい」と認識されている方が日本人のお客様に非常に多いから、業者さんはそのように仕上げているのかな〜と思いました。
然し、スリーストーンリングはある程度立体的に作る事で美しいシルエットとなる為、高さを抑え込んでしまうとバランスが崩れた感じに仕上がるものが多いです。
その為、私がスリーストーンのリングをオーダーする際は、爪の高さが低過ぎて詰まった感じになり過ぎないようにお願いするのですが…
このハートダイヤを加工に出した時は、指示が上手く伝達できませんでした。
加工に出したタイミングがクリスマスシーズンど真ん中だったのもあるかも知れません。

こちらがそのリングの横顔です。
敢えて爪の高さを低くしたような、そんな雰囲気の横顔ではないでしょうか。
でも多分、先程も書いたように、これくらいが日本で需要があるバランスなのだと思います。
石が飛び出してないから、引っかからないような気がしますし、ぶつけないような気がしますもんね。
爪の高さを抑え込んでしまった事で、指に着けるとのっぺりとした印象を受けました。
三つの石を同じ高さに並べた事で立体感がなくなりそのように感じたのかも知れません。

あの時は気落ちしてしまって写真をきちんと撮っておらず、写りの良い写真がないのですが、こちらがその時の写真です。
正面から撮影した写真で見ると、のっぺり感はあまり分からないですね。
加工して頂いた業者さんより部分的な再加工の提案があったのですが、部分的な改造だとリングの腕部分を切断して…となる為、リングの輪っかが弱くなってしまう事を懸念して決める事が出来ませんでした。
というのも、この枠は全てを鋳造でポンッと作っているものではなく、石の枠は別で作っているそうなのです。
その為、腕を切断すればリング全体が継ぎ接ぎな感じになるので、強度が弱くなるかもと思ったんですよね。

詳しく書きますとこんな感じです。
恐らく再加工前の段階で赤でマークしたところがろう付けしてある部分、再加工後は青でマークした部分もろう付けする事になると思います。
文章で書くと難しいのですが、爪を高くして絞る感じで作るとハートシェイプの石座の爪の根本?のオレンジ矢印の部材の長さが短くなるじゃないですか?(つたわれ!)

すると自動的にリングサイズが小さくなるから、リングサイズを大きくする加工が必要になり、手のひら側の部分に継ぎ接ぎが新しく出来てしまうみたいな感じです。
このような感じでリング全体にろう付け(継ぎ接ぎ)ができると、リングの着脱の際に歪む可能性が高いです。
リングの輪っかが歪むとどうなるかというと、酷い場合は石が落ちます。
ハートのダイヤが落ちてロストしたらと思うと…!?!?
そんな経緯がありまして、このリングをそのまま使うのは微妙、再加工も踏み切れず、もう一度違うところで加工し直すのも(予算的に)腰がひけてしまって、数年箪笥の肥やしにしておりました。

このように、ジュエリーのオーダーは何度やっても時々は失敗があるんだな〜と思っております。
というかシンプルに難しいですよね、オーダーって。
こちらも失敗談です↓
あれから私は、クリスマスシーズンに加工に出すのはやめるようにしています。
矢張り凄く忙しい時期には何かあるかも知れないなって思うからです。
年末はオーダーに出す側、お客さんも忙しいですしね。
思い返せば、私もあの時は身の回りがバタバタしていて、凄く忙しかった時でした。
そんな感じで本日は私のオーダー失敗談でした^^
次回はハートシェイプダイヤモンドリングの蘇りのお話をば…!
(おしまい)
【余談】リングの爪を低くすれば引っかからないというのは誤解です。
爪の高い立体的なリングも、爪や細部の作りが良ければ殆ど引っかかりません。
逆に言えば、爪が小さくて高さもないような日本人好みのリングでも、作りが良くないものはすんごい引っかかります。
ぶつけるかどうかは、立体的なリングも平面的なリングも着用に慣れていないとぶつける事があり、爪が小さな繊細なリングほどぶつけた時のダメージは大きいです。