アンティークのダイヤ時計を手に入れてから、まるでグレムリンように増え続けている…そんな最近の私…。
この世界の面白さと奥深さは凄まじく、一度足を踏み入れたら出られない事を身に沁みて感じている所です。
前回のまでのお話し↓
現在その数は9本、ほぼ全てをノーメンテで購入し、修理店へコツコツと通っております。
ノーメンテで購入しているので費用面での負担はグッと低く、自分のペースで蒐集を続けられることが私には合っているようです。
勿論そのような買い方をするという事は、届いた瞬間から問題なく使えるなんて殆どなく、手元にあるのに修理に出さねば使えないというお品も多いという事になります。
時間をかけて修理したり(時間をかけて修理代を工面したりも笑)世界中のお店からパーツを探したりせねばならないので大変に手間がかかる…のですが、そんな手が掛かるところも可愛いのですよ。
今のところ修理不可や修理代が高額になってしまう時計に縁がないのは、運が良かったとしか言いようがないので…これからも運が良くなるように努めるしかありません(笑)
本記事では、最近修理が上がって来た美しい時計の事を記そうと思っております。
それではどうぞご覧ください。
本記事の主役は、
ティファニーのダイヤ時計です。
この時計との出会いは偶然…
ラブストーリーは突然に始まるのです…(チュクチュン!)
ある日ぼんやりネットサーフィンをしていて、特に目的もなく普段見ない個人売買のサイトを開いて見たら、飛び込んで来たのはドヨンとした古い時計…。
この時計の名誉のためにハッキリと記さなければなりませんが、アンティーク時計ってなんかどれも雰囲気がドヨヨンとしてるのが普通です。特に外装のクリーニングやOHなどのメンテナンスがされてないものは顕著です。
「おお?なんだこれは?」
ドヨンとした雰囲気に光る何かを感じ、小さな写真をクリックしてみました。
するとこれは、ティファニー社のアンティーク時計であり1950年代後半のお品っぽいぞ、という事がわかりました。
然し雰囲気がドヨンとしてるので、この時計が可愛いとか美しいとかの魅力が今一つ掴めない感じ…。
だけど良く見ると、シンプルながら上品で、クールな感じとキュートな感じが混雑した素敵なデザインなのかなーという事が予想されました。それ程にドヨンとしてた。
もしかしてぇ〜きちんと整備したら化けるかも知れないなァ〜と思うものの、
ティファニーの時計というのは、絶対にノーメンテで買ってはいけないというセオリーがありました。
ティファニーの時計はノーメンテで買ってはいけない、その理由は「どこ製かわからんムーブメントに入れ替えられている可能性が高いから。」だそうです。
ティファニーやカルティエはジュエリーメーカーなので、自社でムーブメントを作っていませんでした。
ではどうしていたのかというと、有名時計メーカーからムーブメントを買って、それを中に入れていたのです。
ですから、ティファニーの中身にはティファニーの名前が刻印されたムーブメントは入っておらず、有名な時計メーカーのムーブメントが入っていると言う状況になります。
この状況を逆手に取り、無名のムーブメントに入れ替えられてしまっている物が多いというのです。
ですので、ティファニーのアンティーク時計を中身を確認できない状況で購入するのは絶対だめ、必ず専門店で買いましょう〜というのがセオリーなのです。
私はその事を知っていたので、相当迷いました。
なぜこんなにも迷ったのかと言うと、価格がとんでもなく安かったのです。
個人売買のサイトでも、こんなに安く出るのは稀な事、ティファニーではなくハミルトンなどの時計だってこんな価格では見かけません。
ティファニーのダイヤ時計を専門店で買おうとすれば、ブレスレットまで金無垢ですと50万円以上するのが相場ですので、ハミルトンより安いこの時計はとんでもなく安いなと言う印象がありました。
そしてこの時計は、
大手買取チェーンで真贋の査定済み
という情報が…!
然し、大手買取チェーン店ではアンティーク時計の裏蓋をその場で開ける事はない(技師が常駐していないからできない)ので、中身がどんな状況かは確かめていない筈なのです。
という事は、外装はティファニー社のお品で間違いない、だけど中身は依然としてワカランという事になります。
そして迷った点はもう一つありまして、ブレスレットのサイズがめっちゃ短いという事です。
もうこれは致命的で、彫金のアプローチをしてサイズを伸ばさなければならない、詰まりお金がかなり掛かるという事ですのでどうしようかなと…。
そこで思いついたのが、真珠のネックレスについて来たクラスプを流用しようかな?というアイディアです。
このクラスプ、真珠のネックレスを購入した際、おまけで頂いたネックレスについて来たものです。
素材は18金、ねじれるから使いづらいかもと普通のクラスプに交換して不要になっていたのですが、何かに使えるかもと思い地金処分はせずにおりました。
これを、こうすると…!
可成りの長さをupする事ができます。
写真は前回の記事のレディエルジンですが、恐らく構造は同じだから、ティファニーの時計にも使えるだろうなぁと思いました。
真珠のネックレス用のクラスプなので強度は問題ないでしょうけど、念のために接続部分のマルカンは一個じゃなく二個にしてロウ付けしてもらい、ロジウムメッキを掛けて貰えば、強度も見た目もバッチリではないかねと…!?
これで長さが足りない問題は解決です。
え?
じゃあ?
買うの??
天使「いやいや、まだ中身がどうかわからないじゃない、買って中身がヘンなのだったらどうするの!?」
悪魔「そんなの気にしなくていーんだよ!買っちゃえ買っちゃえ!」
心の中で天使と悪魔が小競り合いを始めました。
するとここで出て来たのは新キャラ…。
大天使「リエコさん聞こえますか…購入してから中身がヘンだったら…中身をヘンじゃないものに入れ替えれば良いのです…ティファニーの中身であれば…ロレックスやパテックやモバード…などと聞いているでしょう…モバードなら…モバードなら…比較的安価にムーブメントを探せるのではないでしょうか…時計本体の価格が安ければ…ムーブメント代がかかっても…結局総額では激安なのではないでしょうか…。」
ポチりました。
こうして私の元にやって来たティファニー…!
まず私が試したのは、例のクラスプです。
早速取り付けてみるとピッタリでした。
構造上も問題なさそうです^^
(一応のちに技師にも相談したら、強度面も大丈夫そうとの事!)
そして、届いたその日に時計修理店へダッシュ…!!!
どうしても確かめたい、中身をだ!!!
技師さんにことの経緯を説明し、裏蓋を開けて貰います。
すると…?
これは…
これは…!?
モバードやないかー!!!嬉
中身も間違いないものが入っておりました!
しかも、耐震装置付きのムーブメントです!。
何という幸運、何と言うことでしょうか!?
技師によるコメントはこうです。
「中身もモバード、間違いないですね。そして外装、文字盤のティファニーというロゴが汚いので、恐らく本物でしょう。当時は印刷技術が良くなかったのでロゴがガタガタなんですよ。ロゴが綺麗な物は最近書き換えた物と言えます。恐らく本物、本物と思って良いと思います。」
本物ー!!
ウッヒョォー!!!
そして見てください、ブレスレットのクラスプ部分のこんなに狭いところを…!
ここです。
この部分です。
少し横に向けますね。
いかがですか?
見えますか?
見えないかな?
もう少し寄ってみます。
TIFFANY!!
こんな狭いところにティファニー!!
これはのちに彫られたのか、当時から彫られていたのでブレスレットも純正、なのかはよくわからないし、これが本物の証になるのかも不明なのですが、こんな狭いところにティファニーを見つけて誰かに言いたくなったので書きました(大興奮)
このようにして、技師に時計を託し、修理が仕上がるまでの時間を楽しみに待ちました^^
そして頂いた、仕上がりの連絡…!
受け取った時計を見て驚きました。
地金は真っ白、ダイヤモンドはキラッキラ、製造後60年も経っているとは到底思えないような美しさにハートを射抜かれました。
あのドヨンとした雰囲気は一掃され、クリアなエネルギーに満ち溢れております。
よく見たらラグがハートでなんとも可愛らしい…。
ハートなのにどこかシャープでクールさを感じるのは、あしらわれた二石の大粒バケットダイヤのお陰でしょう。
ブレスレットを束ねる丸輪にも高品質なメレダイヤが埋め込まれており、細部まで美しさを現しているところも、高級ジュエリー店の品物である事を感じます。
細かいところなのですが、裏側から見ると、他のメーカーの時計より若干地金が厚めに造られているんです。
ハミルトンなどの金無垢ダイヤ時計も、現代の感覚からすると地金たっぷりなのですが、それよりも若干厚く肌の当たりが優しくなるようにエッジの処理がなされています。
この辺りも、高級ジュエリー店ならではなのかなぁと感じました。
「修理は問題なく済みました。機械も綺麗だったので、余り使われなかったのでしょう。ただ、竜頭の裏押さえにヒビが入っていたので、将来的に割れる可能性があります。とは言え、裏押さえが割れても使用上は問題がないので、割れてしまってからどうするか考えても良いと思います。」
実は私、この裏押さえが割れてる時計をすでに使っておりまして、問題がない事はわかっておりました。
裏押さえが割れるとね、時間合わせの時に竜頭がピョコンと引っ込み易くなるってだけなんです。
アンティーク時計って、専門店でも裏押さえがないまま売られてるケースも普通みたいなので、割れても結局修理はしないんじゃないかな〜って思っています。
それよりも、機械が問題なく直って安堵しました。
モバードはハミルトンよりパーツを探すのは大変なのです。
そんな訳で今回も、修理代金はOH代だけで済んだという事になります^^
実は私、いつかティファニーなどのジュエリーメーカーの時計を手に入れてみたいなって思っていたんです。
でもティファニーのダイヤ時計は50万円以上するって分かっていましたから、私にはまだまだ先で、今は縁がない時計だなぁ〜って思っていたんですよ。
ティファニーの大ファンならまだしも、コツコツと蒐集している私にとっては後回しになるだろうなって…。
それが思ってもない時に偶然現れて、価格はへそくりで買えてしまうレンジで、光の速さで私の手元にやって来るなんて…凄く不思議な感じです。
この時計にはメッセージが彫られております。
この文章を翻訳サイトに入れてみてもイマイチ良くわからなくて…。
特にESTYが何のことかさっぱりでした。
そこで、Instagramのフォロワさんで英語が話せる方がいらっしゃるので相談させて頂きましたら、このように教えて下さいました。(Jさんありがとう!)
「マーサガフニーさんは、1957年にエスティ(ウエストバージニア州の地名)の友達たちから、この時計を贈られました。」
みたいな感じだそうです。
複数人の友達から、ティファニーのダイヤ時計をプレゼントされるマーサさんは一体何者なのだろう…(笑)
そして時代は『ティファニーで朝食を』の映画が公開される数年前…ロマンを感じてキュンキュンします。
この時計ってこの頃のオードリーヘップバーンの雰囲気にピッタリだなぁなんて思うんですよ。
スッキリした体型、可憐な少女のような可愛らしさ、でもどこかクールで格好が良くて…ゴージャス…。
美しい時計だなあと思っています。
以上が、ティファニーのダイヤ時計を手に入れたお話の全貌でした^^
こういう買い方はリスクが高すぎるので安易にお勧めはできないのですが、
気になる時計が好みにドンピシャで、だけどノーメンテで手が出せない〜って思っている方のヒントになれば嬉しいです。
2023年の締めくくりに素晴らしいダイヤ時計とご縁があったこと、こういったご縁に恵まれた事は大変な幸運でした。
全てのご縁に感謝を…!
そろそろクリスマス、アンティーク時計好きな皆様の元にも、キラキラと美しい時計が舞い降りますように。
(おしまい)