人は産まれる時に、あるカードが配られる。
それは、両親の気持ちが安定しているカードだとか、何不自由なく物が与えられるカードだとか、異性にモテるカードだとか、運動神経がよいカードだとか…
このカードの枚数については、極端に多い人もいれば極端に少ない人もいると思うのだが、皆さんは平均的にみて自分に配られたカードは多い方だろうか?
このカードは多ければ多い方が良い。
否、厳密に言えば違う。
カードが多ければ多いほど人生の難易度が下がる。
それが良い事かどうかは人それぞれの考え方で違う、という話だ。
それはどういう事なのかを説明するには、あるゲームの話をしないとならない。
皆さんはバイオハザードというゲームをご存知だろうか?
有名なゲームであって、街にゾンビが溢れており、その中で冒険していく内容だ。
主人公はゾンビに何度か噛まれると死んでしまう為、記録したところからやり直しという工程を踏む。
まさに人生そのものというようなゲームだ。
(このようにあなたが思わなかったとしたら、あなたに配られたカードは平均より多いという事になるので、これは良い目安ともいえる)
そしてこのゲームは、プレイするにあたってレベルが選べる。
レベルを上げれば、与えられる武器の数が減りゾンビの戦闘能力が上がる。
それなのにわざわざレベルを一番上にしてプレイする者が居る。
配られるカードが多ければ多いほど、人生の難易度が下がる、つまり言い換えれば難関をクリアして行く楽しさはなくなる。
だからこそ、カードが少ない方が人生の噛み応えがあるから良いとか、カードが多い方が人生が楽で良いとかは人それぞれの好みによると思う。
配られたカードの枚数が少ない事に文句を言う者も居る。
勿論私もその中の一人だ。
勿論私もその中の一人だった。
然し、カードの枚数に文句を言ったところで、改善する兆しが訪れることはない。
例えば、購入した物が壊れていたら販売店に言えば取り替えてもらえるし、そういう類のものであれば文句を言う先が存在している為、文句をいう事で改善するといえる。
然し、産まれた時に配られたカードについては、文句を言う先がそもそも存在していない事をご存じだろうか?
文句を言う先としてそれっぽいのは、産まれた国だとか両親だとか、学校だとか会社だとか思いつくかも知れないが、そこはカードのお客様センターではない為、文句を言っても実は改善する兆しが訪れることはない。
即ち、産まれた時に配られたカードの文句を言う先としての窓口は、この世に存在していない事になる。
配られたカードにけちをつけても人生は好転しないと、ある時突然気づいてしまった私は仰天した。
それは凡そ25歳の頃だった。事実を知ってしまい酷く絶望をした。
そして、産まれた時に配られた数枚のカードを握りしめ、このカードを以ってこれからの人生を切り拓いていく覚悟をした。
実は、配られたカードに文句を言わない人だけに可視化されている事実がひとつある。
それは、産まれた時に配られるカード以外に、生きていく中で得るカードというものが存在するという事実だ。
勿論、産まれた時に配られるカードが多い人ほど、生きていく中で得るカードの枚数は多い。
(産まれた時に得たカードを使って未来のカードを取りに行く方が当然乍ら有利なのは、火を見るよりも明らかである)
だが、産まれた時に配られたカードが少ない人にも、生きていく中で追加配布されるカードは確実にあり、実は生き方に工夫をする事でそのカードの枚数が増える。
言い換えれば、産まれた時に配られるカードの枚数が多くても、生きていく中で全く工夫や努力をしなかった場合に追加で配られるカードが減るケースも多い。
この話をしようか酷く迷うが、きっと悪い意味ではないと解ってくれそうなので、する。
私の友人に、残念な美青年(美中年?)という美しい顔をした男が居る。
私は男性をイケメンどうか判断する基準が厳しい方だが、彼は一般人には珍しい程に顔立ちが良い。
男性がここまで顔立ちが良いと、産まれた時に無敵カードが配られたに近い奇跡で、今まで相当に良い想いをしてきたに違いない。
然し彼曰く、これからの人生が不安だという。
何が不安かというと、漸く正社員になった仕事のこと、それ以上に気掛かりなのは、彼の親族(父や祖父等)全てが毛髪を失っているタイプであり肥満傾向に悩んでいるという事実にある。
彼にとってただ一つの武器はイケメンである事なのに、太って老けた上に毛髪を失う事は致命傷ではないのか?
是非彼には、その時が訪れてしまったら、後頭部の頭皮を頭頂に移植する手術を受けて、老けないようスキンケアとダイエットに勤しんで、これからも無敵カードを所持し続けて頂きたい。
尚、彼は私と同い年だが独身だ。
一番最後に会った時「おれも誰かから必要とされたい」と酔った勢いで泣いていた。頑張れ。
このように、産まれた時に配られるカードが無敵カードであっても、その後の人生でより多くのカードを得る努力をしない場合には、人生の難易度が爆上がりしてしまうケースも珍しくはない。
人生はゲームだ。
配られたカードを使って闘い抜き、自分好みの目標を目指すシンプルなゲームである。
配られたカードの枚数が少ない事を嘆いても、カードは追加配布はされない。
だからこそ、できる工夫をし、より多くのラッキーカードを得て人生を楽しみたい。
※注意※
平均より手持ちのカードが少ない人へ、頑張れ等と努力を促すタイプの声掛けは慎むよう心がけた方が良いかも知れない。
極端にカードが少ない人は普通に生きていくだけで相当な努力を強いられるため、これ以上の努力を他人から促される事は、本人の生きる意志を奪う事になりかねない。
(おわり)