タイムレスなサファイアの指輪、それは滅多に出逢うことのできない夢のような指輪でした。
この夢のような指輪は、私にとっては棚からぼた餅的に転がり込んできたような経緯がありまして、それも含めて宝石とのご縁というもの、そして石を繋いでくれたバイヤーや指輪を作り上げた職人という、関わる全ての方々とのご縁を感じ感動せざるを得ません。
このサファイアを初めて手にした際、なんて不思議な石なんだろうと思いました。
手のひらの上で転がる小さな塊は、眺めるほどにめらめらと輝き、艶々とひかり、それでいて柔らかく見えるのです。
意味がわからないと思うのですが、例えるならば水羊羹のようなこっくりとした柔らかさと、果物ゼリーのような瑞々しい柔らかさを持ち併せ、不思議な輝きを放っている‥。
勿論サファイアなので硬度はダイヤモンドの次に硬いのですが…何故このように感じるのか今でも全く分かりません。
ちょうど‥抜群に透明度の高いフローライト(蛍石)の原石…あのような柔らかい雰囲気、あれにとても近いといえば宝石好きな方にはお分かりでしょうか?
何しろ説明が難しいのですが、奇妙なほどの魅力を感じたんです。
然しこれがまた、良い色石というのはデザインが決まらない。
良いものであれば枠にお金をかけたくなっちゃうし、だからと言って予算はたっぷりあるわけではないし、適当な枠をつけて失敗したらいやだなあとか、ダイヤを添えるならどうしたいのかとか、良いメレダイヤは高いじゃんとか、ダイヤ取り巻きが正解なのかスリーストーンが正解なのかとか、作るにしてもどこに依頼するのかとか、お尻が大きいルースだから空枠案はないぞとか、グルグルグルグル考えちゃって、結局すぐには仕立てに出す事ができませんでした。
こうして暫くこのサファイアはルースケースに納められインテリアとして部屋に飾られていたのですが、ある日こんな事が起こります。
ある指輪の脇石…ダイヤモンド二石が宙に浮いたのです。
この指輪です。
全然活躍させる事ができなくて…中石は母から受け継いだ唯一のダイヤモンドなのですが、これは一粒タイプにしてピンキーにした方が活きるのではないか??と気づきます。
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となるとダイヤモンドの中石を引き立てていたこの脇石、ダイヤモンド二石が宙に浮いてしまいます。
この脇石、実はそれぞれが小さな一粒ダイヤのリング、それ即ちこのダイヤはリングのメインストーン(中石)だったのです。つまりですね、とてもとてもグレードが良い、かなり輝くギランギランダイヤモンドなのです。
でも私、エクセレント以上のギランギランダイヤモンドが自分には使い難いように感じる方で、なんだかしっくりこなくてバラしてしまっていました。まあ、素材として脇役として使うなら良いのかも、という軽い気持ちで保管していたんですね。
それをこのスリーストーンリングに使用していたのですが、また素材として保管する流れに…。
ここでですね、かの不思議なサファイアのルースを思い出すわけです。
「あのサファイアに、このダイヤモンドを並べてはどうか…このリング枠も素材として使えるのではないか…?」
すると思い浮かぶのは一つ、この三ピースを上手く料理できるのは鍛造の職人しかいない!
こうしてその職人さんのもとへひとっ飛び、コンタクトを取るや否や早速工房にお邪魔することになりました。
その職人さんとは、Instagramのフォロワーさん達から蜂蜜れもんリングと呼ばれて親しまれているイエローダイヤモンドのリングに輝きをプラスして下さったクニさんです。
詳細はこちら↓↓rieko.net
蜂蜜れもんリングの時は、既存のリングの石周りだけをイエローゴールドに交換できないかという依頼で、本当に快く引き受けて下さいました。
インスタグラムではハイジュエリーの制作やリペアの写真を掲載しておられるので、持ち込みのリペアはDMするのも気が引けたのですが、とても暖かく迎えてくださいました。
さて、サファイアのルースケースと中石不在のリング枠を握り締め中央線に乗り込み、ワクワクハラハラとした気持ちで工房へ…。
工房に着くと、職人のクニさんに一通り希望を伝えます。
「外資系ブランドのような感じのしっかりしたスリーストーンで、爪が高くても大丈夫です。なんかこう、昔からある古臭い感じの指輪らしい指輪が良くて、海外で売ってるような風情のものはできますか?」
こうして出来上がったサファイアリングが仕上がったのが今年の春…。
受け取ったのは私の誕生日、リングケースを開けると燦然と輝くリングがありました。
ダイヤモンドのギランギランな輝きがサファイアの妖艶な輝きを存分に引き出し、素晴らしい輝きを奏でています。
然し、指につけてみると一つ気になる事がありました。
少し地金が厚い、指を閉じてみると少し違和感を感じたのです。
これは仕上がって着けてみないと判らないところでして、これがあるからフルオーダーは難しいのです。
そこで「指に合わせて地金の厚みを調整して頂けないでしょうか…」と相談してみましたら快諾してくださり、お直しに…ってところで新型コロナ感染者数が大爆発!!!!!!!!
世の中の状況が一気に緊迫し始めた為、落ち着いてからお直しに伺うことになりました。
だから今!なのです!
半年以上もお預けでしたが、結果的にこのタイミングがベストでした。
この期間で自分に似合うものについての理解が深まり、沢山の気づきがあったのですよ。その後にお直しとなったことで、自分にぴったりのリングを手に入れられたと思っています。
先ほども書きましたが、フルオーダーは本当に難しいと感じています。
詳細に好みを伝えても、自分の伝え方の良し悪しの影響で、職人さんとのイメージの共有がなかなか上手くできません。
ここを何ミリでと明確に数字で指定してCADで作ってもイメージとかけ離れてしまう事が多いですし、スケッチを描いた上で数字で指定しイメージを職人に伝えても少し誤差が出る事が多いです。
これは、何度か同じ職人さんに発注して、お互いのイメージの擦り合わせができている状況でないと一発OKは難しいのかな…とか色々思います。
今のところ私の中では、鍛造の職人さんにざっくり作ってもらって、受け取りの際に微調整を依頼するというのがベストかなーと思っています。
でもでも、仕上がった品物に微調整をお願いするって、相手は職人さんだと気軽には頼めない‥っすよね!?!?
でもねでもね、クニさんは本当に物腰柔らかお兄さんで、快くお返事をくださり、調整を始めてから仕上がりまでの作業は驚くような速さで、こういう職人さんなら安心だなあと思ったものです(ありがたや…)
こちらはクニさんより送って頂いた制作過程の写真ですが、制作過程と仕上がり後にいつも必ず写真を送ってくださいます。
写真で判る範囲は受け取り前に微調整もできますし、実際に指に嵌めて違和感があればその後に相談をしてみましょう。
細いを太いは作り直しになるけれど、太いを細いは直ぐに調整ができるそうなので、腕細めか腕太めなど、どちらのサイズ感が良いのか迷ったら、太めに作って貰うと良いかもですね。
そんなこんなで私の元にやってきたサファイアリング、脇石も手持ちの余った素材からですし、仕立ても地金売却などがあり、このリングには似つかわしくない程のリーズナブルな予算で着地しました。
予ねてより正統派スタイルの大粒サファイアリング、英国人のエンゲージメントリングのような素敵な品が欲しいと思っていて、でもハイジュエラーの超高額品でなければリングデザインも含めてイメージにぴったりのものを手に入れるのは無理かなあと、ほぼ諦めに近い感情を抱いていました。
サファイアのクオリティー、リング枠のクオリティー共に素晴らしい品は、日本の路面店では滅多に見掛けませんし、その水準に満たないお品であっても超高額で、私には試着することも気が引けるし…。
こういうのとかね…↓↓
それがこの度、そのイメージにぴったりなサファイアのリングが、覚悟していた予算の半分もせず、涼しい顔で私の薬指におさまっているというのです!!(驚きを隠せない)
地金相場や工数のボリュームで工賃に幅が出るようなので詳しい数字の言及は避けますが、クニさんのところでフルオーダーを検討されておられる方のためにざっくり書くと、今回のデザインは「わああ高いなー!」と感じるダイヤ散りばめ系の空枠の価格の7割から半額くらいの感覚です。(空枠より鍛造のフルオーダーの方が安い‥と言うことも世の中にはあるのです…。)
もっと言えば、十五万円〜二十万円台くらいのレンジで空枠を検討されていて、というか希望のデザインがそのあたりの相場でしか存在していなくて、どの空枠もちょっとだけイメージと違うなあと思っていらっしゃる場合は是非職人さんのフルオーダーも検討されてみてくださいという感じでしょうか。
手作りの職人さんの鍛造の指輪は、金属を叩いて作るため地金の締まりが良く、ジュエリーという道具としての耐久性も高いですし、細部を丁寧に仕上げておられるのでつけ心地が最高です。
最後に、このリングに燦然と輝くサファイアの詳細を記しておきましょう。
こちらのサファイアは楽天に出店されているubazakuraさんより、ルースの状態で見せていただいたサファイアの群れから選ばせていただきました。
サイズは3.17ct、お尻の大きな美人さんです。妖艶な美しさが堪りませんね。
このサファイアも昔の在庫の売れ残りとのことで、待ってたよおお!と言われた気がする(気のせい)というか、なんだかすごく感慨深いです。
確かスリランカ産、ですが個人的にはコーン…なんとかサファイアに近い良さがあるのではないの?と親馬鹿な事(石ばか?)を思っております^^
ギラギラとしたブルーの中に、やや紫を咬んでいる美しい色合いが、私の心を掴んで離しません。
参考↓↓(クオリティースケールを見てみると、このサファイアの色のトーンは4、輝きはS)www.suwagem.com
私がお買い物をさせていただく事が多いubazakuraさんですが、大粒の色石のチョイスが本当に素晴らしいなあといつも思います。
恐らくですが、店主さんは石がお好きなのかなあと思うのです。
目の付け所が一般の宝石屋さんと少し違うなあというか、ミネラルショーなどで見かけるインドから買い付けている現地語ペラペラなガチ勢、石が好きでビジネスをやっている方と視点が似ていると思います。一癖ある石のポテンシャルを理解しているという感じでしょうかね。
今まで見せて頂いた石でおおおと思ったのは、アクアマリン・エメラルド・サファイア・オパールです。
エメラルドなんか「エメはもう良い石がないんだけど…」と自信なさげに見せて頂いたルース数点が大粒なうえ凄く綺麗だった事があります。(勿論全部買った)
サファイアを提供してくださったubazakuraさんと、リングに仕立ててくださったクニさん、そして10年近く前になけなしのお金で小ぶりなダイヤモンドリングを買った自分…。
その全てが繋がった光り輝く宝石のご縁、これ無くしては奇跡のような品には出会えなかったんだなあと感動します。
いつも思うのですが、宝石というのは欲しいときに欲しいものが見つかるかというと、意外と見つからない事の方が多いんです。
反対に、自分にぴったりな石に出会う時は驚くほど段取りがスムーズだったりもするんです。
ですので、私が宝石のお買い物に向き合う時は、頭でっかちにならないように心がけているんですね、欲しいものは今出逢えないかもしれないけれど、ぴったりな石に出逢えている場合に見逃さないようにです。
特に私の場合は既製品のジュエリーを手に入れることより、石と枠はバラバラのところで手に入れたりするものですから、素晴らしいご縁が驚くような流れで繋がるととても興奮するのです。
ubazakuraさん、クニさん、この度もありがとうございました^^
(おしまい)
今回作って頂いたようなデザインの鍛造の指輪、こちらは海外の職人さんのyoutube動画ですが、制作過程の全貌が見られます。手間隙をかけていますよね。