素晴らしい指輪を手に入れました。
古の時代に人の手で切り出されたダイヤモンド…その中から選び取った大きく美しい石は、ひときわ個性的な輝きを放っておりました。
職人の手により生み出された優美で気高い枠は、その女性的な美しさだけでなく男性的な剛健さをも持ち合わせる、唯一無二の姿でありました。
そんな二つの美しいものが完璧に組み合わさった完璧な指輪です。
これは紛れもなく世界にひとつだけの指輪でした。
本日はそんなお話…。
という事で!
あのアンティークダイヤモンドが、私の理想の頂点、完璧な姿に着替えて帰ってきました。
あのアンティークダイヤモンドのお話↓
① ラウンドブリリアントカットの大粒ダイヤモンドを探す旅はついに終結しました。然し、私の運命の石はラウンドブリリアントカットではなく…? - リエコの手帳
② 恋焦がれて漸く出逢えた運命の石はオールドヨーロピアンカットでした。 - リエコの手帳
③ 続・恋焦がれて漸く出逢えた運命の石はオールドヨーロピアンカットでした 〜ソリテールしか勝たん!の巻〜 - リエコの手帳
④ 続続・恋焦がれて漸く出逢えた運命の石はオールドヨーロピアンカットでした 〜帰ってきたダイヤモンドの巻〜 - リエコの手帳
ふうー…長かった。
長かったですよ、何もかもがね。
欲しくても絶対に買えない期間…
石を探すも見つからない期間…
アンティークダイヤモンドとの出会い…
理想の枠を模索する日々…
このような工程を経て、六年という時間が掛かりました。
思い返せば…自分の経験値が上がるのを含めて六年という時間が必要だったのでしょうね。
前回までのお話はこちら、爪の高さや腕の太さの好みを知りたくて空枠でイメージに近そうな指輪を仕立てたところまででした。
実はこの時、私の理想のソリテールって作るのって大変過ぎるのかも…って怯んだ上にしょげちゃって、このままでも良いかな…と思うも急に踵を返す…!!
というのも、やはり石揺れさせてしまったんです。
ギリギリまで繊細に仕上げた空枠のリングの限界でした。
詳しく書きますと、本来の空枠の爪よりも繊細さを出すために細く磨き、通常留める位置より高い位置に石を留めて頂いているんです。
だからやっぱり、構造上石揺れしやすいんですね。
※空枠を改造したことで石揺れしやすくなってしまったという事です。
六本爪のリングは石揺れしてもロストしづらいと言うけれど、万が一ロストしたら私はショック死してしまう!!!!!!
そんな訳で、この指輪を握りしめてもっと理想を目指したいー!!!と職人さんのところに行って来ました。
「この空枠のここが違う、もう少し厚く…。」
「この空枠のここは全く同じサイズ感で、でも全体のバランスをみておかしければ減らして…。」
「毎日ガシガシ使って、万一フローリングに落としてしまっても石揺れしないような…。」
このようにニュアンスを細かく伝え、職人さんの意見も細かく伺いながら取捨選択(この段階でかなりの案を没にしました)し、決定事項をスケッチしていきます。
このスケッチがある事でお互いの情報共有ができますし、スケッチを渡してしまう事で職人さんが制作時に打ち合わせ内容を思い出しやすいというわけですね。
↓この記事は伏線だったのですねー
デザイン的なところは、今回は婚約指輪のアップグレードという事ですので、元の婚約指輪のデザインの系譜を継ぐイメージで…
元の婚約指輪はお椀型のまあるいお花…牡丹を連想させる石座だったので、新しい婚約指輪は百合のような背の高い気品がある石座というように発注をしました。
このように発注し、職人さんが制作に入られると途中経過を連絡して下さいます。
この段階では、スケッチに指示したように、空枠と高さを合わせるという点と、スケッチした私のイラストが再現されている事がわかります。
ただ、腕の太さや爪の太さなどは、実際に指につけてみてから微調整で削れるよう、職人さんの体感でやや大きく作ってくれています。
ソリテールのようにシンプル過ぎる指輪は0.1mm〜の超微細な違いが大きな影を落とす事もありますので、少し幅を持たせている訳ですね。
そして仕上がりの日…
ん??なんだ???
何かに違和感を感じる!!!
スケッチに忠実、完璧なフォルムなのに何故なの!?
「フォルムも何もかも完璧なのに、何故か強い違和感を感じるのです。」
そのように正直に申し上げますと、
「折角のお品なので、イメージに完全に沿うようしっかり直した方が、僕も良いと思います。」
このように仰って下さいましたので、この日は腕の幅を微調整した程度で一旦持ち帰ることにし、じっくりと観察することにしました。
指輪を一晩中眺めながらある事にきづきます。
「まさかこのライン…!」
石座のラインがデザインの要素をごちゃつかせているのではないか!?
これだ!!
解ったのなら善は急げ、
「おはようございます。違和感の正体がわかりました。」
このように連絡すると、直ぐに対応可能とのことで職人さんの元にダッシュ…!
この溝があることで、ピンクメレ(及びホワイトメレ)を留めた丸いラインとの兼ね合いでごちゃついて見えること、この溝は微調整で消すことができるのかということ、溝を消した事でのっぺりとし、違和感がでないのかということ…。
この時点では、微調整でできなければ石座の作り直しで追加費用がかかることは覚悟しておりました。
そして、この枠に入った事で、前回の枠の時と比べて輝きが変わってしまったことも、光源を変えて観察して判ったことの一つでした。
以前は、ぶわんぶわんという強いファイヤと、バシッバシッという強い白光が放たれておりましたが、それらが全てスンっと弱まってしまったようでした。
アンティークダイヤモンドの独特な華やかさと光の強さが止んでしまったような感じというと分かりやすいでしょうか。
こちらについても相談させていただき、頂いた御回答は、
「なんとか微調整の範囲内でできそうな気がします。少し時間がかかるのですが、今日お時間大丈夫ですか?」
えーーーー!すごい(涙)
「時間は無限にあるので大丈夫です!むしろ、お時間を頂いてしまい申し訳ないです!」
このようにして、一工程づつ慎重に進めて行く微調整が始まりました。
微調整に掛かった時間は三時間…。
一工程ずつ慎重に、スケッチでニュアンスを伝えながら進めて行きます。
ごちゃついて見えたラインが消え、のっぺりとしないようにフォルムを微細に磨いていく、そして光をもっと取り入れられるように光穴を拡げていく…。
このような事を、全体のバランスを見ながらほんの少しずつ、初めて見た人には違いがわからないレベルの範囲で調整して下さいました。
先程も申し上げたように、ソリテールのようにシンプル過ぎる指輪は0.1mm〜の超微細な違いが大きな影響になるからです。
こうして、指輪が仕上がりました。
最終磨きのバフを終えて受け取り…感動!!!
なんて美しいソリテールなのでしょうか…。
滑らかなラインは非常に女性的で、それでいて甘ったるくない様子はまさに百合の花です。
そして驚くのは、これだけ女性的な精妙な波動を放つフォルムを描いているというのに、爪を破壊しないと石を外せないほどの強度が出ているというのです。
オーダー通りの、石をロストしないソリテール…これは剛健な要素、男性的な要素なんですよね。
女性的でもあり男性的でもある中庸なデザイン、これが私が心の底から求めていた理想の婚約指輪でした。
そして腕の幅と厚みは、オーダージュエリーならではの地金の厚みを残しながらも繊細な印象になるよう、初見では分からないくらい微妙なレベルで、石から離れるに連れて絞ってあります。写真をよーくみると細くなっているのがわかりますか?
なぜこのようにしたかというと、このアングルから見た腕がストレートだと何故か無骨に見えてしまったのです。
これは、このデザインが持つ、隠れた男性的な要素が影響しているのかなと推測しました。
ええ、それだけちっぽけな違いが男性性に傾きすぎたり女性性に傾きすぎる、大きな違いが出るのがソリテールだと思います。
元の婚約指輪と並べてみた雰囲気はいかがでしょう?
デザインの系譜がうまく受け継がれたのではないでしょうか。
石のサイズが違うので全てを同じにはできないのですが、どちらも花のような石座です。
そして今回は石座の根元、両面にダイヤモンドを嵌め込みました。
これがまた厄介で…
メレをドンピシャな位置に入れると石座に干渉しちゃうし、あまりここを大きくすると全体のバランスが崩れるし、じゃあメレを小さくすれば良いのかというとこれ以上小さいメレを入れると何が何だかわからないので入れる意味とは…みたいな話になり、兎に角絶妙でした。
言葉が見つかりません(感動)
そしてこのメレ、なななんと、楽天フラッグスさんのメレでして、片面はホワイトメレ、もう片面はアーガイル産の色の濃いピンクダイヤモンドです。
楽天フラッグスさん、ダイヤモンドが綺麗な事で評判ですよね。
こちらで独身時代の誕生日に購入したリングがありまして、それがダイヤモンド七石がお花のようになったリングでした。
そしてこのモデルは、中央のダイヤがピンクダイヤのモデルが存在していたんです。
確かアーガイル鉱山が閉山する直前で、限定品だったような…。
↓写真はお借りしました
こちらのお品です。
このモデルは長らく売り切れだなーと思っていましたが、今改めてみると廃盤になった様ですね。
このリングがまた美しくて、強く光るダイヤモンドが七石集まっていて凄く綺麗なんですよ。
でも私の指には可愛らしすぎて…ピンキーサイズにしていたのですが出番がなく、長らく箪笥の肥やしにしていました。
このリングは、ピンクダイヤモンドが欲しいと思い頑張って購入したお品で、自分自身をしっかり幸せにして生きていこうって思った年の誕生日プレゼントでしたから、思い入れもあって何とか身につけたいなと思っていたんです。
そう思うも、メレサイズのピンクダイヤモンド一石ってどうにも使い道がなく箪笥を肥やすこと八年…。
とっておきの指輪の、デザイン的に重要なポジションとして、晴れて移籍することに成功しました。一時は売却した方が良いのではと悩んだこともあったんです。
売却しなくてよかったーーー!!!!!
こういう事がありますから、買い直すのが難しいような石を売却することはなるべくしないようにしています。
メレサイズとはいえ、これだけの色の濃さがあるアーガイル産のピンクダイヤモンドって今買うと高いんじゃないかなあ?
二本並べると二本とも美しいですね。
サイズも石座の作りも同じなので重ねてつけることもできます。
まるで親子のトワエモアです。
実はソリテール二本を重ね付けすると、通常は石同士が当たってしまい石が欠ける原因になったりするのですが、この二本は爪が良い具合に組み合わさり石同士が当たることがありません。
これはこうしようと思ってこうなったのではなく、作って重ねてみたら偶然こうだったのです。とってもラッキーでした。
そしてこの花の様な石座、柔らかなS字曲線を描いているのがお分かりでしょうか?
旧婚約指輪の石座は、すこーし膨れたお椀型なのですが新婚約指輪はS字のカーブが出ています。
これって本当に微細な違いなのですが、全体の雰囲気に大きな影響を及ぼしています。
そして、このS字カーブを描くフォルムは普通の工程では作ることができないんです。
このフォルムを出す為に爪を削ってしまうと強度が著しく落ちてしまうんですね。
実はこちらも、こうしたいと思って作ったデザインではなく、偶然の産物として現れたフォルムでした。
このカーブがあるからこそのエレガントさ、プラチナの指輪が工業製品ではなく有機物の様に見える所以でしょう。
そして輝き!!
輝きの問題はどうなったのかというと…?
ぶおん…
ふぁんふぁん…
ぶわっ…
はい、完璧です。
実は前の輝きと同一ではないんですよ。
前はもっと溢れるような輝きだったのですが、今回は輝きに締まりがあるような感じがします。微妙な違いですけどね。
輝きに締まりが出ることで、より強くはっきりした輝きになったように思います。
ホースで水を撒くとき、どんなに水圧を上げても水の勢いには限界がありますが、ホースの口を指で摘むとぐっと勢いが増しますよね、丁度そんな感じに近い何かを感じます。
平たくいうと、前より良くなったということですね。
見よ、其方は美しい…
ふぁんふぁんふぁんふぁん…ぶあっ!!!
ぎらっ、バシバシっ…ふぁんふぁんふぁんふぁん…ぶおん!!!
擬音でしか説明できない事が大変もどかしいです。
宜しければこの記事の一番下に貼ってあるInstagramのリンクより動画をご覧くださいませ。
この輝きの件は職人さんもかなり心配してくださっていて、太陽光の元で輝きのチェックをし、ご報告を差し上げましたら安堵しておられました。
ダイヤモンドは輝きが命ですもんね!
世界に一つだけの指輪…。
こうして私は、素晴らしい宝物を手に入れました。
太陽の光が降り注ぐと直視できない程に輝く、大きくて力強いダイヤモンドです。
力強いダイヤモンドを支えるのは優美に咲く花のような石座、その根元に輝くダイヤモンドはまるで守り神のようですね。
守り神は白いダイヤモンドとピンクのダイヤモンド、まるで紅白饅頭の様に縁起がいいのもお気に入りです。
最後に、旧婚約指輪と全く同じ刻印を入れて頂きました。
胸がいっぱいです。
この指輪に関わった、全ての人に祝福を。
ありがとうございました。
(おしまい)
↓こちらから輝きについての動画を見れます。
PS. 夫よ、夢を叶えてくれてありがとう。