急にどした!?
って感じの表題から始まる本記事は、最近色々なジュエリーアカウントさん達とお喋りをする機会が増えた私が、可成りの頻度で耳にする事…
「初心者ですので宝石のルースを買うなんて難しいです。」
「宝石の目利きができないのでノーブランドで買いたくても買えないのです。」
このようなご意見について、私なりに感じている事を書いてみても良いのかなーと、ここに記して見ようと思った次第でございます。
まず私は、オーダーでジュエリーを仕立てる事や、ノーブランドのお店で製品を購入する事と、ハイブランドのお店でジュエリーを購入する事を比べて、前者がよいとか後者がよいとかそういう風に考えてはおらず、どこでどんなお買い物をするかはケースバイケースだと考えいる人間です。
ですので、今回の記事はあくまでも、
「ルースから宝石を選んでみたい!」
「ジュエリーの卸のような場所で購入してみたいが、今ひとつ一歩踏み出せない!」
そんな皆様に向けて書かれた記事である事をご理解いただければ幸いです。
ほんの少しくらいヒントになる事が書いてあるかもしれないけどもどうでしょうー?という感じのカジュアルな内容ですのでお気軽に読んで頂ければと思います。
でも長文です。(9000字)
目利きとは?
さて、まず初めにお伝えしておきたいことは、
目利きって何?というお話ですね。
私が人生で初めて目利きという言葉を耳にしたのは、テレビ東京のなんでも鑑定団という番組でした。
骨董品集めが趣味のお爺さん(主に一般の方)が出演し、自分のお宝の真贋を知り、一喜一憂するような感じの番組です。
目利きができるお爺さんが持って来た壺は「良い仕事してますね〜!」と、購入価格の何倍も高値がつき、
目利きができないお爺さんが持ってきた壺は「贋作ですね〜!」若しくは「お土産物ですね〜!」と言われ購入価格の何十分の一の価値である事が判明する…。
この場合には目利きができないと偽物を買ってしまうので、目利きができないといけないのでしょうけれど、宝石の場合は目利きができないといけないのかといえば、個人的には、目利きができなくても良いのではないかな〜と考えているのです。
余談・バローダの月が鑑定されていました↓
宝石って骨董とは違い、贋作ってまず無いじゃないですか。
骨董の壺に関しては、有名作家の作品かそうじゃないかで価格が雲泥の差になりますが、それを見分けられる、即ち目利きができる人ってひと握りなのだと思うんです。
だから知り合いの骨董屋から買った壺が偽物だった、なんて事が起こり得るんですかね?
宝石って、鑑別するラボを通してしまえば、ほぼ間違いはありません。検査してしまえば分かってしまうと言う事です。
簡単にいえば、赤いトルマリン(ルベライト)をルビーですよーって嘘をつくような売り方は出来ないんですね。検査してしまえば分かってしまいますから。
昔はというか、有名な話だと英国王室の黒太子のルビー、あれは最近の検査でレッドスピネルだと言う事が分かりましたが、こう言ったことは現代の宝石の市場では殆ど無いと思って大丈夫だと思います。
ですので、ちゃんとしたラボが発行した鑑別書(簡易的なものでも可)がついている宝石であれば、偽物を掴まされる事はほぼないと言えるでしょう。
(黒太子のルビーに関しては、英国王室が偽物を掴まされていたと言うわけではないらしく、当時はルビーとスピネルは同じ鉱物として扱われていたからこうなったとのことですよ)
じゃあちゃんとしたラボってどこなんだ?
これも色々言われますが、宝石の真贋(天然か合成か、無処理か処理された石かという意味での真贋)だけであれば、それなりに大きいところならどこでも大丈夫ではないかなと個人的には思っております。
宝石の真贋だけならというのは、パパラチアサファイアみたいに鑑別機関によってパパラチア判定が出たり出なかったりとか、そういう特殊な石でない限り大丈夫かなという事ですね。
私が持ってるジュエリーたちの鑑別は、
・中央宝石研究所(CGL)
・日独宝石研究所
・GIA
・ダイヤモンドグレーディングラボラトリー(DGL)
この辺の鑑別でした。
特に拘りがあるとかではなく、ジュエリーを購入した時について来たものや、簡易的な鑑別のみで購入していたので新たに鑑別書を取得したものなどです。
それでもやっぱりお得に買いたいなら目利きができないとダメなんじゃないの?
この質問に関しては、イエスでもありノーでもあると思っています。
もしあなたが、スリランカ現地で、スリランカ現地人の採掘者及びバイヤーからサファイアを購入するのなら目利きができないとダメでしょう。
然しあなたが、日本国内で、宝石市場的にも価値が高い美しいサファイアを買いたいなら、目利きが出来たとしてもお得に買うのはほぼ不可能ではないでしょうか。
日本国内にサファイアが流通している時点で、ある程度は目利きができる業界の人が価値を判断して値段をつけて売っているのですから、私達が目利きが出来たとしてお得に買うことは難しいのではないかという事です。
仮にも宝石屋を名乗る人が、全く目利きができなくて、100万円の価値があるものをウッカリ1万円で売ってしまうなんて考えづらいですよね?
「ワー!これはキャサリン妃の婚約指輪と同品質と言えるトッピンのロイヤルブルーサファイヤですねえ!」
このようなことが判断できたとしても、その宝石はそもそもとびっきり高価なのです。
じゃあリエコさんはどうしているのですか?
結構皆さんに聞かれるのですが、私は目利きができる人ではありません。
上記に記した通り、目利きができたとしてもお得に買える訳でもないと思うから、無駄な勉強はしないというスタイルですね。
そんな私ですが、宝石を選ぶ時はいつもこうしています。
【ジュエリー市場で価値が低いとされている石の中から、とびきり大粒で、自分の目で見て美しいと感じるものだけを選別して入手している】
ジュエリー市場で価値が高いものとそうでないものの分かりやすい資料は、諏訪恭一さんのこちらの書籍がおすすめです。
ジュエリーにはランクがあります。
ジェムクオリティー
ジュエリークオリティー
アクセサリークオリティー
このような3等級に分かれるとのことです。
ジェムクオリティーに分類されるような宝石は、例え採掘地に赴いても滅茶苦茶に安く買えるなんて事はありませんから、日本国内では言うまでもなく…。
即ちジェムクオリティーに分類される宝石は、高すぎて手が出ませんから、私の射程圏内ではないという事になります。
では私が狙える範囲はどこかと言うと、アクセサリークオリティーからジュエリークオリティーの範囲です。
このアクセサリークオリティーからジュエリークオリティーというのは、一般的には人気がない、色が薄いサファイアなどの色石や、アイボリー系やブラウン系のダイヤモンドなんかが含まれる範囲になります。
この範囲が私でも狙える範囲でして、この中から自分の目で見て美しく、可能な範囲で大きい物を選び取っているだけですよって話です。
宝石の大きさの大切さ
日本国内では【小さくても高品質の宝石を】という価値感が浸透していると思うのですが、
世界的には全くそんな事はなく、やや品質は劣るが大きい宝石を選びとる方が正解とされています。
世界的には〇〇みたいな言い回しって私はあまり好きじゃないのですが、どうしたって宝石やジュエリーの文化って海外の国々の方が成熟しているので、海外では当たり前に認識されている事っていうのは理に叶っている事が多いんです。
ある海外のサイトで、サファイアの指輪を持つ者たちがお喋りしている場所がありました。
そこで、ご親族から受け継いだというサファイアの写真を投稿していた方が見事で…!
それは、6ctの淡い色合いのセイロンサファイアでした。
1920年にご親族が入手されたものらしく、アンティークの素晴らしい指輪です。
この見事なサファイアを宝石市場的な価値観で判断するならば、色が浅すぎてジュエリークオリティーにも入らない、アクセサリークオリティーになります。
然し6ctという見事なサイズには付加価値がつきます。
色が浅くても、ひときわ大きくて輝く宝石には価値があります。
そんな大きなサファイアを受け継いで身につける事ができるなんて、そんな楽しい話はありませんから、大切に身につけて受け継いで来たのでしょう。
1920年に入手した価格で、今同じようなサファイアを入手する事は不可能でしょうから、所有し続けることでゆっくりと価値が上がっているのではないでしょうか。
このように、宝石の価値的にも、サイズが大きいことには大きな意味があります。
そして受け継いだ宝石を自分好みに形を変えて使うにも、ある程度の宝石のサイズがないと、選べるデザインが限られてくるという点も忘れてはなりません。
余談ですが、私は宝石のランク付けって余り意味が無い事だなと考えているんですよ。
否、宝石の市場では必要な事でしょうし、宝石を資産の保存として買われるような方には必要でしょう。
でも、私にような生活水準の人間には殆ど意味がない事のように思うんです。
宝石市場目線のランクがどうか、そんな事よりも、自分達が楽しんで身に付けられる様な輝きだったりサイズだったりがあれば良い、そちらの方が重要です。
6ctの色が薄いサファイア…この石にどれだけ惹かれていて、どんなに美しいと感じているか、所有する理由はそれで十分だと思いませんか。
ですので私は、自分の目で見て美しいが、宝石市場的には全然高品質じゃないよ、だけどめっちゃデカい!って宝石を入手するように心がけている感じですね。
自分の目で見て美しい、これが目利きというのではないですか!?
そうですね、これが目利きというのであれば、皆さん誰しもが目利きができると言う事になります。
ご自身の目で見て美しいと感じるものを選別し、予算の中から(可能な限り大きなものを)購入すれば良いのですから。
でもきっとそれが出来ない…いや自信が持てない…こういう事なのではないかなと思います。
「自分が選び取った石が、他の人から見て恥ずかしいものだったらどうしよう…。」
「この石を身につけてハイブランドのお店に入ったら、お店の方におかしいと思われないかしら…。」
こういう感じの感情って、少なからず誰にでもあるのではないでしょうか。
もちろん私にも過去そういう感情があったのですけれど、ある出来事をきっかけに、どうでも良くなってしまいました。
そこそこ栄えてる街(若しくはジャスコ)には大体あるようなチェーン店の宝石屋さんってありますよね。
卸とかじゃなく、ちゃんとした路面店の宝石屋さんです。
そこで大粒ダイヤモンドを見せてもらった事があるのですが、1ctでクラリティーがI1、カラーはFでカットがエクセレントなんですけど、全然綺麗だとは思えなかったんです。
でも価格は58万円でした。
悪いのはクラリティーだけで、カラーもカットも素晴らしいんですよ、憧れの1ctですよ!って売り方なのでしょう。
でも、この価格で納得して買う方が居るからこの価格をつけられるわけです。
私なら半額近い値段で、もっとアイクリーンなI1、色や輝きはもっと低グレードなものを選ぶなあ、そのほうがこの石よりももっと綺麗なのになあと思いました。
私はこの時、
「美しいかどうかは人それぞれ、どんな石に幾ら投資するかも人それぞれなんだ。ちゃんとしたお店でこういう外観のダイヤモンドを扱っているのだから、私ももっと自由に石を選べば良いんだよな。人から見てどうかより、自分が見て石に惚れているかどうかが大事だ。」
こう思えたんです。
そう思った瞬間、自分の石選びに関する自信のなさはどうでも良くなりました。
じゃあ、お買い得な石を買うために、相場ってどう調べているのですか?
宝石の相場ですよねー。
これはね…インターネット中の情報を端から端までしらみ潰しに見ています(大爆笑)
もうね、暇人か変人にしか出来ない事でしょうね!
でも再現性がありそうなやり方に限りお話をするとすれば、誰かのお役に立つかもしれませんから、ざっと書いてみましょうか。
ダイヤモンドの相場の調べ方
私は、ダイヤモンドならJamesAllenを良く見る事で大体の相場が掴めるかなと思っています。
ブルーナイルでも良いんだけど、ブルーナイルってMカラーとかI1とかのグレードの取り扱いがないんですよね。
しかも、同じグレードで比べるとJAよりほんのり価格が高いような気がします。
ダイヤモンドの買い物は、アメリカの相場を知っていて、そこから大きく外れていなければ滅茶苦茶な失敗にはならないんじゃないかなーと思っています。
具体的には、購入検討中のダイヤモンドがお得かどうか知りたい場合、購入検討中のダイヤモンドの4CをJAのフィルターにかけてみて、そこに表示されたダイヤモンド達の価格と購入検討中のダイヤモンドの価格を見比べたら判るよーという事です。
色石の相場の調べ方
相場で言ったら色石の方が分かり難いかも知れませんね。
色石の相場を知りたい時、私は手始めに楽天を見てみます。
もしブルーサファイアのプラチナ製の指輪が欲しい場合は、検索窓に「ブルーサファイア PT」などとキーワードを打ち込みます。
その検索結果を、価格が高い順に並べ替えて、ぜーーーーーんぶ流して見てみます。
ブルーサファイアのプラチナの指輪が、大体幾らくらいで買えるのかを知るためです。
すると、どう逆立ちしてもブルーサファイアのプラチナの指輪が1万円って事はないんだとわかります。
多分、3万円くらいからチラホラ出てくるんじゃないかな。でも3万円のブルーサファイアのプラチナの指輪って、あったとしても石も小さくて華奢だと思います。
するともう少し高いお品が良いのかなーとか思って見ていく感じになりますが、6万円くらいから良さそうなのが増えて来るのでしょうけど、しっかりしたダイヤモンド取り巻きとか、それなりに見栄えがするサファイアだと10万円以上でやっと出てくる…。
こんな風にすると、大体の相場観が掴めて来ますよね。
大体の相場観が掴めたら、サファイアの色とかデザインを詳しく見て行くと、自分の好みのサファイアリングを購入する為にはどのくらい予算が必要かが見えて来ます。
このように、楽天を見るだけでも相場感を掴めるので、欲しい宝石の相場がよく分からない方は試してみて下さい。
私は更に、海外のサイトなども色々見つつ、Instagramなんかも活用してもう少し情報を集めたりしますが、全然そんな事しなくても大丈夫だと思います(笑)
一番大事なのは誰から買うか
数年前、英国で夢のような事件が起きました。
ある女性がバザーで1500円で購入した石付きのリング、その石の大きさから模造石だと思い30年に渡り普段使いしてきたが、何とその石は本物のダイヤモンドで5000万円の価値がある事がわかったとのことです。
ウッヒョー!!!って叫びたくなっちゃうくらい素晴らしいオールドカットのダイヤモンド…!!!!
こんな事件が起きるならどこで買っても良いのではと思いたくなりますが、それは違うと思います。
宝石は、宝石がとっても好きでバイヤーをやっている方と、宝石にはそんなに興味がないけどバイヤーをやっている方と比べると、選び取る石に大きな差が出ると私は感じます。
どちらもビジネスでやっているのですから、みんなが気にいるようなとても綺麗な石、さっきの話でいうとジェムクオリティーの石なんかは誰でも買い付けができると思うのですよ。分かり易いですからね。
でも宝石がとっても好きなバイヤーさんは、欠点があるけれどそれがエクボに見えるような、何だか魅力的な石を入手してくるのが巧い印象があります。そう言った石は比較的リーズナブルなものが多いのです。
こういったバイヤーさんは宝石への大きな愛がありますので、お客さんの質問なんかにも真摯に答えてくれるし、対応が手厚いなあと思うところが多いです。
私はおんなじ所で買い物することが多いから沢山のお店を知っているわけでは無いのですが、このブログの過去記事に登場するショップさんで詳しく書かれているところはそんな印象がありますね。
まとめ
本日は「宝石の目利きができないと石を買うことができないのではないのか?」みたいなことについて私が個人的に思っている事を記してみました。
まとめますとこうなります。
- 宝石の目利きはできなくても良いんじゃないか(私はできない)
- ちゃんとした鑑別書や鑑定書が付いた宝石なら安心
- 自分の目で見て美しいと思うものをきちんと選び取ること
- できるだけ大きいものを選ぶ方が後々良い気がする
- 自分の目に自信がないとか心配しなくても良いんじゃないか
- 相場観は地道にリサーチするしかない
- できれば宝石愛がありそうな人から買うと尚いい
宝石のことになると途端に難しく考えてしまう方が意外と多い印象があるのですが、そんなに難しく考える必要はないのだと思いますよ。
ラムネの瓶の中で揺れるガラス玉を美しいと感じたことはありませんか。
指に留まった蝶の羽に美しさを感じたことはありませんか。
沢山の色が重なり広がっていく夕焼けの空を美しいと感じたことはありませんか。
宝石もこれと同じで、シンプルに美しいと感じるものを追い求めていけば良いだけなのです。
稀に、宝石を見る目を養うために宝石鑑定士(ダイヤモンド鑑定士?)の資格を取られる方がいらっしゃると思うのですが、私はこの様な資格を取りたいと思ったことがありません。
それはなぜかと言うと、今で十分満足しているし、資格を取る高額な費用があるなら超大粒の宝石を買う方に使いたいからです(笑)
宝石の目利き…これが出来ても出来なくても、宝石の趣味はとても愉しいものです。
沢山の宝石を見ていると、自分に訴えかけてくるような石に遭遇する事があります。
そんな石は是非とも連れ帰って、大切に身につけて楽しんでください。
そしていつかは、愛し大切にしてきた宝石とお別れしなければいけない日が来ます。
でも、きっと持ち主が変わっても、自分と変わらず愛し大切に身につけてくれるでしょう。
私は昨年、凡そ100年前には誰かの所有物だったであろうダイヤモンドを入手しました。
新たな持ち主である私の手により新しい枠が取り付けられ、この先数十年という歳月を一緒に過ごして行くのです。
(おしまい)
↓凡そ100年前には誰かの所有物だったであろうダイヤモンドを入手した話